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小児矯正はいつからはじめる?最適な時期やメリット・デメリットを解説
2025/10/29
子どもの歯並びは、将来の噛み合わせや顔立ちにも大きく影響します。
しかし、「いつから矯正をはじめるべきなのか分からない」「早すぎてもだめなのでは?」と迷う保護者の方も多いでしょう。
小児矯正は、成長期の力を利用し、顎の発育や歯の並びを整える治療で、はじめるタイミングが重要です。
本記事では、小児矯正の最適な開始時期や治療の流れ、メリット・デメリットを解説します。
子どもの将来の歯並びを守るために、早めの理解と準備をはじめましょう。
小児矯正とは
小児矯正は、成長期の顎の発育を活かして歯並びや噛み合わせを整える矯正治療です。
ここでは、下記の内容について解説します。
●Ⅰ期治療
●Ⅱ期治療
●大人の矯正との違い
詳しく見ていきましょう。
Ⅰ期治療
Ⅰ期治療は、乳歯と永久歯が混在する「混合歯列期」に行う矯正の第一段階です。
この時期の骨はまだ柔らかく、顎の成長を正しい方向へコントロールしやすいのが特徴です。
歯が並ぶスペースをあらかじめ確保することで、永久歯が自然に整って生えるように導けます。
出っ歯や受け口などの骨格的なズレを早期に補正できるため、将来的な抜歯や外科的処置を避けられる可能性も高まります。
指しゃぶりや口呼吸、舌の位置など、歯並びを乱す原因となる悪習慣の改善も、Ⅰ期治療の重要な目的です。
これらの癖を早い段階で正すことで、歯や顎の発育だけでなく、発音の明瞭さや呼吸のしやすさにもよい影響を与えます。
一方で、成長を見ながら治療を進めるため、経過観察が長期化することも。
また、Ⅰ期だけでは歯の細かなねじれやズレを完全に整えられない場合があるため、Ⅱ期治療へ移行するケースも少なくありません。
Ⅰ期治療は、段階的なケアを前提とした治療といえます。
Ⅱ期治療
Ⅱ期治療は、永久歯が生えそろった「永久歯列期」に行う本格的な矯正です。
ブラケット装置やマウスピース矯正を用いて、歯を理想の位置へと精密に動かしていきます。
Ⅰ期で顎のバランスが整っていれば、抜歯をせずに短期間で歯列を仕上げられることも多く、自然な噛み合わせを実現しやすくなります。
見た目の改善だけでなく、噛み合わせの安定によって、顎関節への負担軽減や虫歯・歯周病の予防にもつなげることが可能です。
歯を動かす力はやや大きくなりますが、強い痛みが出ることは少なく、多くの場合は数日で慣れる程度です。
また、矯正装置の見た目を気にして治療をためらう子どももいるため、モチベーションの維持には周囲のサポートが欠かせません。
大人の矯正との違い
小児矯正と成人矯正の大きな違いは、「成長を利用できるかどうか」です。
小児矯正では顎の骨が柔らかく、成長期の力を活かして歯並びや骨格を整えられます。
一方、大人の矯正は成長が止まっているため、歯を動かす力を人工的に加える必要があり、治療期間が長くなる傾向があります。
小児矯正は「将来のトラブルを予防する」ことを目的とするのに対し、成人矯正は「すでに乱れた歯並びを改善する」治療です。
早期の小児矯正を行うことで、成長を味方につけながら、負担の少ない治療が可能になります。
小児矯正はいつからはじめるのが最適?
小児矯正をはじめるのに最適な時期は、6~12歳頃の「混合歯列期」と呼ばれる、乳歯と永久歯が混ざる時期です。
この時期は顎の骨が柔らかく、成長を利用して歯並びや噛み合わせを整えやすいのが特徴です。
具体的な理由は、下記のとおりです。
●顎の発育をコントロールしながら歯を動かせるため、自然な仕上がりに導ける
●永久歯のスペースを確保できる
●治療負担を軽減できる可能性がある
小学校入学前後の6~7歳頃は、最初の永久歯が生えはじめる重要なタイミングになります。
この時期に一度、歯科医院で「顎の成長」と「歯並びのバランス」をチェックしておくとよいでしょう。
小児矯正を検討すべき歯並びの特徴
子どもの歯並びや噛み合わせの状態には個人差がありますが、放置すると成長期の顎や永久歯の位置に影響するケースもあります。
とくに下記のような歯並びは、早めに歯科医院に相談するのがおすすめです。
●出っ歯(上顎前突)
●受け口(反対咬合)
●叢生(乱ぐい歯)
●空隙歯列
●交叉咬合・開咬(かいこう)
それぞれの特徴を詳しく解説します。
出っ歯(上顎前突)
上の前歯や上顎全体が、下の歯よりも大きく前に出ている状態です。
見た目だけでなく、口を閉じにくい・口呼吸になりやすいなどの機能的な問題を引き起こします。
口が常に開いた状態が続くと、口腔内が乾燥して虫歯や歯肉炎のリスクが高まることも。
また、前歯が突出しているため、転倒時に歯を折る危険性もあります。
小児矯正で顎の成長を調整し、上下のバランスを整えることで、自然に口が閉じやすくなるなどの改善が期待できます。
受け口(反対咬合)
下の前歯が上の前歯よりも前に出てしまう噛み合わせで、「反対咬合」とも呼ばれています。
食べ物を噛み切りにくい・発音が不明瞭になるといった機能的なトラブルが起こりやすく、下顎が過剰に成長してしまう場合もあります。
成長期にこの状態を放置すると、将来的に外科的治療が必要になることも。
早い段階で上顎の成長を促す矯正を行うことで、顎のバランスが整い、自然な噛み合わせの形成につながるでしょう。
叢生(乱ぐい歯)
歯が重なったりねじれて生えたりして、歯列がガタガタしている状態です。
原因の多くは、顎が小さい・歯の生えるスペースが足りないことにあります。
歯ブラシが届きにくいため、磨き残しが生じやすく、虫歯や歯肉炎のリスクが高くなります。
また、見た目のコンプレックスにつながることも少なくありません。
小児矯正では、顎を広げて歯が並ぶスペースを確保する治療を行い、将来的な抜歯を避けながら整った歯並びを目指します。
空隙歯列
歯と歯の間に隙間がある状態で、「すきっ歯」とも呼ばれます。
乳歯期には一時的に見られることもありますが、永久歯が生えそろっても隙間が残る場合は注意が必要です。
隙間から空気が漏れることで、サ行やタ行などの発音が不明瞭になったり、食べ物が挟まりやすくなったりします。
舌で歯を押す癖(舌突出癖)があると、隙間がさらに広がってしまうことも。
小児矯正で歯列を整え、舌の位置を改善することで、発音や見た目のバランスを整えられます。
交叉咬合・開咬(かいこう)
上下の歯が交差して噛み合う「交叉咬合」や、奥歯を噛んでも前歯が噛み合わずに隙間ができる「開咬」も矯正を検討すべき歯並びです。
これらは顎のズレ・舌の癖・指しゃぶりなどが原因で起こることが多く、放置すると顔の歪みや発音障害を引き起こす場合があります。
開咬では前歯に力がかからず、奥歯に負担が集中してしまうのも問題です。
成長期に顎の発育をコントロールすることで、噛み合わせの不均衡を早期に改善し、将来のトラブルを防げます。
小児矯正の治療期間
小児矯正は、子どもの成長段階に合わせて「Ⅰ期治療」と「Ⅱ期治療」に分けて行われます。
それぞれの目的や治療内容が異なり、かかる期間も変わります。
ここでは、各治療段階の一般的な期間と特徴を見ていきましょう。
Ⅰ期治療|1~3年
Ⅰ期治療は、乳歯と永久歯が混在する6~11歳頃(混合歯列期)に行われます。
治療期間は、1~3年ほどかかるのが一般的です。
顎の成長を利用して歯が並ぶスペースを確保したり、噛み合わせのバランスを整えたりするのが目的です。
おもな特徴は、下記のとおり。
・成長の力を利用し、無理のない歯列形成ができる
・顎を広げることで将来的な抜歯リスクを減らせる
・指しゃぶりや口呼吸などの悪習癖を改善できる
歯や顎の成長に合わせて装置を調整し、治療後も経過を観察しながら、Ⅱ期治療への準備を進めます。
Ⅱ期治療|1~2年
Ⅱ期治療は、永久歯がすべて生えそろう12~17歳頃に行われる本格的な矯正です。
治療期間は、およそ1〜2年が目安です。
Ⅰ期治療で整えた顎のバランスをもとに、歯を正しい位置へ移動させていきます。
おもな特徴は下記のとおりです。
●ブラケット装置やマウスピース型装置を使用
●見た目だけでなく、噛み合わせや発音機能の改善も目的
●Ⅰ期を行っている場合、抜歯を避けられる可能性が高まることがある
治療期間はおよそ1~2年が目安です。
Ⅱ期治療が完了したあとは、保定装置(リテーナー)を用いて、歯並びを安定させる保定期間を設けることが一般的です。
反対咬合(受け口)の場合
反対咬合(受け口)は、ほかの歯並びに比べて顎の成長の影響を強く受けるタイプです。
Ⅰ期治療だけでは改善が難しい場合もあり、長期的な観察と段階的な治療が必要になります。
Ⅰ期とⅡ期を合わせると、治療期間が4~5年に及ぶケースもあります。
治療の特徴は、下記のとおりです。
●成長期の早期(5~7歳頃)から顎の成長方向をコントロールする
●下顎の過成長が強い場合、Ⅰ期治療を12~15歳頃まで延長する場合もある
●顎の発育が落ち着いた段階でⅡ期治療に移行する
早期に治療をはじめることで、将来的な外科手術や抜歯を避けられる可能性が高まります。
受け口の傾向が見られる場合は、早めに専門医へ相談するのがおすすめです。
小児矯正のおもな治療内容
小児矯正では、成長期特有の顎の発育を利用しながら、歯並びと噛み合わせのバランスを整えていきます。
乳歯と永久歯が混在する時期(6~12歳頃)には、顎の成長を正しい方向へ導くⅠ期治療が中心です。
永久歯が生えそろったあとは、Ⅱ期治療として歯の位置を細かく整える場合もあります。
Ⅰ期・Ⅱ期の双方を含めた代表的な治療内容は、下記のとおりです。
| 治療内容 | 詳細 | 使用する装置の例 |
| 歯並びに影響する癖の改善 | 指しゃぶり・口呼吸・舌の癖などを改善し、歯並びや顎の発育を正常に導く | MFT(口腔筋機能療法)装置、トレーナー型装置など |
| 顎の成長促進・抑制 | 出っ歯や受け口の原因となる顎のズレを整え、バランスよく成長させる | 機能的矯正装置、チンキャップ、フェイシャルマスクなど |
| 歯列弓の拡大 | 歯が生えるスペースを確保し、歯列を広げる | 拡大床、急速拡大装置(RPE)など |
| 歯の位置調整 | 永久歯の萌出方向を誘導し、噛み合わせを整える | 部分ブラケット、ワイヤー矯正、マウスピース型装置など |
| 保定(リテーナー) | 治療後の歯並びを安定させ、後戻りを防ぐ | 保定装置(リテーナー)など |
子どもの成長スピードや歯の生え変わりのタイミングに合わせて、上記の治療を単独または組み合わせて実施します。
たとえば、指しゃぶりなどの癖を改善したあとに顎の成長を誘導したり、拡大装置でスペースを確保してからⅡ期治療に移行したりと、段階的に進めるケースが一般的です。
また、治療後の保定期間も重要です。
せっかく整えた歯並びが戻らないよう、リテーナーによる安定期間を十分に設けることで、長期的に美しい歯列を維持できます。
小児矯正にかかる費用の目安
小児矯正の費用は、治療の内容や期間、使用する装置の種類によって異なります。
一般的には、Ⅰ期とⅡ期に分かれて、それぞれ別途費用が発生します。
多くのケースでは自費診療となりますが、特定の先天性疾患などがある場合には保険が適用されることも。
それぞれの費用の目安は、下記のとおりです。
| 項目 | 特徴 | 費用の目安 |
| Ⅰ期治療(6〜12歳) | 顎の拡大・成長誘導・癖の改善 | 約30〜50万円 |
| Ⅱ期治療(12歳以降) | 永久歯を整列・噛み合わせの最終調整 | 約40〜70万円 |
| 部分矯正 | 前歯や一部の歯列のみ調整 | 約10〜30万円 |
| 保定装置(リテーナー) | 治療後の歯並びを維持 | 約3〜5万円 |
矯正費用は分割払い(デンタルローン)に対応している医院も多く、長期的に無理なく治療を続けられます。
小児矯正をはじめるメリット
小児矯正をはじめることで得られるメリットは、下記のとおりです。
●成長期の力を活かして顎の発育をサポートできる
●歯が動きやすく、痛みが少ない
●将来的な抜歯や外科治療のリスクを軽減できる
●顔立ちや噛み合わせのバランスが整う
●治療期間や費用の負担を抑えやすい
詳しく見ていきましょう。
成長期の力を活かして顎の発育をサポートできる
出っ歯や受け口といった噛み合わせのズレは、上顎と下顎の成長バランスの不調和が原因で起こることが多くあります。
成長期に治療を行えば、装置の力と自然な発育を組み合わせて、骨格的な位置関係を整えられるのが魅力です。
たとえば、顎が小さい場合には拡大装置で横幅を広げたり、下顎の発育を促したりといった調整が行えます。
このように、子どもの発育に合わせて「成長を利用できる」のは、小児矯正ならではの特徴です。
歯が動きやすく、痛みが少ない
成長期の子どもの骨は柔軟で代謝が活発なため、歯が動きやすく痛みが少ないという特徴があります。
大人の矯正では歯を支える骨が硬いため、歯の移動に時間がかかり、痛みや違和感を覚えることも少なくありません。
一方、小児矯正では弱い力でも十分に歯を動かせるため、装置への順応も早く、治療をスムーズに進められます。
子ども自身の負担が少なく、治療を前向きに続けやすい点も大きなメリットです。
将来的な抜歯や外科治療のリスクを軽減できる
永久歯が生える前に顎のスペースを広げたり、成長方向を整えたりすることで、抜歯をせずに済む可能性が高まります。
大人になってから矯正をはじめる場合、歯が並ぶスペースが不足していると抜歯が必要になるケースも。
小児矯正であらかじめ顎の幅を広げるなどの調整を行えば、健康な歯を残したまま歯列を整えられます。
さらに、骨格的なズレを早期に修正することで、将来的な外科矯正のリスクも軽減可能です。
顔立ちや噛み合わせのバランスが整う
小児矯正は、単に歯を整えるだけではなく、顔全体のバランスを整えることに期待できる治療です。
顎の成長を誘導することで、口元の突出感や顎の後退といった輪郭の不均衡を改善し、自然で調和のとれた横顔が形成されます。
さらに、噛み合わせが整うことで、発音や咀嚼(そしゃく)にもよい影響を与えます。
顔の左右差や表情筋のバランスも改善されやすく、「見た目」と「機能」の両面で健康的な成長につながるのが魅力です。
治療期間や費用の負担を抑えやすい
成長期の力を利用することで、治療効率が高く、期間や費用の負担を抑えられます。
子どもは骨の柔軟性が高いため歯の動きがスムーズで、大人の矯正に比べて短期間で効果が出やすいのが特徴です。
また、Ⅰ期でバランスを整えることで、Ⅱ期治療(本格矯正)の必要がなくなる、または治療期間を短縮できるケースもあります。
結果として、トータルコストを抑えつつ、より健康的で安定した歯並びを目指せます。
小児矯正をはじめるデメリット・注意点
小児矯正には多くのメリットがありますが、事前に知っておきたい注意点もあります。
おもな注意点は、下記のとおりです。
●長期的な治療になる場合がある
●矯正装置による違和感・不快感が生じる
●虫歯・歯肉炎のリスクが高まる
それぞれ詳しく解説します。
長期的な治療になる場合がある
小児矯正は、成長期を利用しながら顎の発育や歯の位置を調整していくため、治療期間が1~3年と長くなるケースがあります。
さらに、Ⅰ期治療で成長をコントロールしても、永久歯が生えそろうⅡ期治療が必要になることも。
下顎の成長は15歳前後まで続くため、受け口(反対咬合)のように成長の影響が大きいケースでは、より長期的な観察が欠かせません。
長期間の通院を前提に、無理のないスケジュールを立てましょう。
矯正装置による違和感・不快感が生じる
矯正装置を装着した直後は、口の中に異物感や軽い痛みを感じることもあります。
固定式装置の場合は装置が唇や頬に触れる違和感、取り外し式では装着時間を守る負担が生じるかもしれません。
また、歯を段階的に動かす過程で、一時的に歯列が凸凹したように見えることも。
これは「歯の移動途中の一時的な見た目」であり、歯列全体のバランスを整えるために必要な経過です。
最近では、透明なマウスピース型装置やカラーゴムを使った矯正など、見た目の負担を軽減できる方法も選べます。
子どもが前向きに治療に取り組めるように、歯科医師と相談しながら装置を選ぶとよいでしょう。
虫歯・歯肉炎のリスクが高まる
矯正装置を装着すると、歯の隙間や装置の周囲に食べかすやプラーク(歯垢)が残りやすくなるため、虫歯や歯肉炎のリスクが高まります。
とくに、固定式装置ではブラシが届きにくいため、丁寧な歯磨き習慣が欠かせません。
歯科医院で正しいブラッシング方法を学び、専用ブラシやフロスを使って日々のケアを徹底しましょう。
定期的にフッ素塗布やクリーニングを受けることで、虫歯を未然に防げます。
家庭でのサポートと定期検診を両立させることが、健康的な矯正治療を続けるポイントです。
まとめ:成長段階に合わせた最適な矯正を選ぼう
小児矯正は、成長期の力を上手に活かすことで、将来の歯並びや噛み合わせのトラブルを未然に防げる治療です。
早い段階で適切なサポートを受けることで、抜歯や外科的処置を避け、自然な成長の中で美しい歯列を育てられるでしょう。
「重井歯科医院」では、子どもの発育段階に合わせた矯正プランを提案し、保護者の方と一緒に無理のない治療を進めています。
バリアフリー設計やキッズスペースの完備、痛みに配慮したやさしい治療など、はじめての通院でも安心できる環境を整備。
乳幼児歯科健診・妊産婦健診など地域の公的検診にも対応しており、成長期から大人まで長く通える「地域密着型の歯科医院」です。
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